障害支援区分と要介護認定は何が違うのか ― 測っているものが根本的に別です
「障害支援区分」と「要介護認定」、名前が似ているので混同されがちですが、測っているものがまったく違います。
とくに、障害福祉サービスを使ってきた方が65歳を迎えるタイミングでは、この違いを知っておくと制度の理解がぐっと楽になります。
この記事では、調査を行う側から、2つの制度の違いを整理します。
認定調査に携わる立場からの個人的な経験と、公表されている制度資料にもとづいています。所属先の見解ではありません。運用の細部は自治体によって異なります。
まず結論から
障害支援区分は**「必要とされる支援の度合い」**を測るもの。
要介護認定は**「介護に要する手間(時間)」**を測るものです。
似ているようで、測定の物差しそのものが違います。
制度を並べてみます
| 障害支援区分 | 要介護認定 | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 障害者総合支援法 | 介護保険法 |
| 区分 | 非該当・区分1〜6 | 非該当・要支援1〜2・要介護1〜5 |
| 測るもの | 支援の度合い | 介護の手間(時間) |
| 調査項目 | 80項目 | 74項目(基本調査) |
| 有効期間 | 原則3年 | 原則6か月〜48か月 |
数字の並びだけ見ると似ていますが、中身は別物です。
いちばん違うのは「行動面・精神面」の比重です
障害支援区分の80項目のうち、34項目が行動障害に関する項目です。
大声・多動・自傷・こだわり・昼夜逆転・意欲の低下・幻覚妄想・対人トラブルなど、行動面や精神面の特性が、区分全体の半分近くを占めています。
これは、知的障害・精神障害・発達障害のある方の状態を、より正確に反映するための設計です。
一方、要介護認定は身体的な介護の手間を測ることに重心があります。この比重の違いが、2つの制度の性格を決めています。
なぜ、こんなに違う制度になったのか
障害支援区分の前身は「障害程度区分」という制度でした。
当時は身体面の評価が中心で、知的・精神・発達障害の特性が反映されにくいという課題がありました。
その反省から、行動面・精神面の項目を大幅に増やし、いまの障害支援区分に作り直されました。
つまり、要介護認定をベースに作られた制度ではなく、障害の特性に合わせて独自に設計された制度です。名前が似ているのは偶然ではありませんが、中身は別の考え方で組み立てられています。
サービスの目的も違います
| 障害福祉サービス | 介護保険サービス | |
|---|---|---|
| 目的 | 自立した生活と社会参加 | 加齢にともなう介護ニーズへの対応 |
| 対象年齢 | 制限なし(18歳未満は児童福祉法) | 65歳以上/特定疾病による40歳以上 |
| 費用負担 | 応能負担(非課税世帯は0円) | 原則1割(所得により2〜3割) |
| 支給量 | 一人ひとりの必要性に応じて決定 | 区分支給限度基準額の範囲内 |
| 計画を作る人 | 相談支援専門員 | ケアマネジャー |
障害福祉にしかないもの:同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援、重度訪問介護など。就労支援や外出・行動面の支援は、介護保険に相当するサービスがありません。
介護保険にしかないもの:訪問リハビリ、通所リハビリ、福祉用具貸与、特別養護老人ホームなど。
両方の対象になる方もいます
65歳以上で、なおかつ障害のある方は、両方の制度の対象になることがあります。
このとき原則として介護保険が優先されますが、一律に切り替わるわけではありません。障害福祉にしかないサービスは継続でき、介護保険の支給限度額で足りない分は障害福祉サービスで補うこともできます。
このあたりの詳しい仕組みは、別記事にまとめています。
まとめ
障害支援区分は「支援の度合い」、要介護認定は「介護の手間」。
行動面・精神面をどれだけ重視するかが、2つの制度の設計思想の違いです。
似た名前だからといって、同じ物差しで測られているわけではありません。それぞれの制度が、それぞれの目的のために作られています。
障害支援区分の認定調査そのものの流れ(申請から結果通知まで、80項目の内訳、特記事項の役割など)は、こちらにまとめています。 → 〔障害支援区分の認定調査―調査員は何を見て、どう記録しているのか〕
65歳を迎えたときにサービスがどうなるかは、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 〔障害福祉サービスを使っている方が65歳になったら―「介護保険に切り替わって終わり」ではありません〕


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