認定調査では、毎回のように同じ質問をいただきます。
「頑張ればできたことは”できる”に入るのか」「大げさに言った方が有利なのか」——不思議なことに、聞かれる内容はいつもほぼ同じです。
これは偶然ではないと思っています。「ちゃんとしていると思われたい」「大変さを分かってほしい」という、ごく自然な気持ちが、判断を迷わせているのです。
この記事では、よくある7つの誤解を、なぜその誤解が生まれるのかという背景と一緒にお答えします。
認定調査に携わる立場からの個人的な経験と、公表されている制度資料にもとづいています。所属先の見解ではありません。以下の例は複数の場面をもとに再構成したもので、特定の方の記録ではありません。
なぜ、同じ誤解が繰り返されるのか
理由は2つあると感じています。
1つ目は、「できないと思われたくない」気持ちです。
調査という場では、つい頑張って見せてしまう。これは自然な反応で、責められることではありません。
2つ目は、「大変さが伝わらないと不安」という気持ちです。
支援を受けるための調査だからこそ、実情以上に強く訴えたくなる。これも、よく分かる感覚です。
どちらも、悪気があるわけではありません。ただ、この2つの気持ちのままで答えると、記録がかえって実情から離れてしまうことがあります。
Q1. 「頑張ればできた」は”できる”に入りますか?
いつもそうできるかどうかが基準です。
毎回かなりの時間がかかる、声をかけ続けないと終わらない、翌日ぐったりする——それは「支援が必要な状態」です。
実際にあった例:「着替えはできます」と答えた方が、実は毎回30分近くかかり、途中で疲れて座り込んでしまうことがある、と後からご家族が補足したケースがありました。「できる」の一言だけでは、この30分も、途中の座り込みも記録に残りません。
「できました」ではなく、**「できるけれど、こういう条件がついています」**と教えてください。
Q2. 家族が全部答えてもいいですか?
まず本人に伺いますが、そのあとの補足はとてもありがたいです。
実際にあった例:本人が「大丈夫です」と繰り返す場面で、ご家族が「実は夜中に何度も様子を見に行っています」と補足してくれたことで、初めて見守りの実態が記録できたケースがあります。本人の言葉を否定するのではなく、重ねることに意味があります。
先に本人が話す時間さえあれば、そのあとは遠慮なくどうぞ。
Q3. メモを渡してもいいですか?
大歓迎です。短くて構いません。
実際にあった例:「困っていること」とだけ書かれたメモより、「先週火曜、夕方に大声、20分続いた」と書かれたメモの方が、そのまま特記事項に活かせます。日付・頻度・具体的な場面、この3つがあるだけで、記録の精度がまったく変わります。
本人の前で読まれたくない内容であれば、その旨を書き添えてください。別の場面で確認します。
Q4. 本人が「できます」と言ったら、そのまま記録されますか?
いいえ。手順、頻度、誰が関わっているかを確認していきます。
実際にあった例:「一人で買い物に行けます」という本人の言葉に対し、実際は近所の決まった店にしか行けず、レジでのやり取りは店員が慣れているから成立している、という背景が分かったことがあります。本人の言葉と実際の状況、どちらも記録に残すのは、どちらかが嘘だからではなく、視点が違うだけだからです。
Q5. 調査の日だけ頑張れてしまいました。もう遅いですか?
市町村の担当窓口に連絡してみてください。
審査会の前であれば、追加で確認されることがあります。区分が出たあとなら、区分変更申請という方法もあります。
「あの日はたまたま調子が良かった」という状況は珍しくありません。緊張や気遣いで、普段以上に動けてしまう方は実際に多くいます。焦って結果を受け入れる必要はありません。
Q6. 大げさに言ったほうが有利ですか?
いいえ、逆です。
実際にあった例:実際より重く伝えた内容が、医師意見書の記載と食い違い、審査会で「どちらが正確か分からない」と判断が長引いてしまったケースがあります。話を盛ることは、有利になるどころか、審査そのものを不安定にします。
事実と頻度が、いちばん強いとお伝えしておきます。
Q7. 調査員に、区分の見込みを聞いてもいいですか?
聞いていただいて構いませんが、答えられません。
決めるのは市町村の審査会だからです。意地悪で濁しているわけではなく、そういう立場だからだとご理解ください。
実情を、そのまま届けるための3つのこと
ここまでの7つを振り返ると、共通する対策は3つに絞れます。
1. 「できる」で止めず、条件を付け足す——「できます、ただし◯◯があれば」まで話す
2. 頻度と直近のエピソードをセットで伝える——「時々」ではなく「先週、何回」
3. 本人とご家族、両方の言葉を残す——どちらかを我慢して合わせる必要はない
どれも、身構えず日常のまま話していただければ、自然とできることです。
最後に
7つの誤解に共通しているのは、盛る必要も、隠す必要もないということです。
調査員は、ちゃんとしているかどうかを採点しているのではありません。普段の暮らしを、審査会まで届く記録に整えることが仕事です。
うまく説明しようとしなくて大丈夫です。
障害支援区分の認定調査そのものの流れ(申請から結果通知まで、80項目の内訳、特記事項の役割など)は、こちらにまとめています。 → 〔障害支援区分の認定調査―調査員は何を見て、どう記録しているのか〕
同じ状況でも、伝え方一つで記録がどう変わるかは、こちらの記事で具体例を紹介しています。 → 〔認定調査で「できます」と答える前に―同じ状況でも、伝え方で記録はこう変わります〕


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